地元民が見ておくべき富士の山ビエンナーレのもう一つの魅力

今(2020年11月)、2年に1回の富士地域アートの祭典「富士の山ビエンナーレ」が開催中です。

Face to Face Vol.167の記事でも紹介しているように、コロナで危ぶまれるなか、11/23までの会期中の土日祝のみですが無事開催となりました。

今年で4回目となるこのビエンナーレ。数ある町おこしイベントの中でも特に外向き志向で、地元ローカルだけの盛り上がりではなく地域外のオーディエンスを強く意識しているところが特徴です。県外・海外からアーティストを招致し、来場者も全国区をターゲットにしています。


11月3日文化の日、晴れて気持ち良い陽気になったので、散歩がてら富士本町の会場に行ってきました。
(地元じゃない人向けに説明すると、富士本町というのはJR東海道線富士駅前から北、富士山方向にまっすぐ伸びる、アーケード商店街です。長さ約600m。地方のよくある古い商店街の佇まいですが、通りの正面に富士山が日本一きれいに見えます。)

このイベントは富士本町・富士川・富士宮・蒲原という富士地域4エリアにまたがって開催されているのですが、富士本町エリアではアーケード通りの中間よりやや富士駅寄りに位置する「イケダビル」(池田屋靴店横)と「旧三島屋酒店店舗」が会場となっています。

受付は、上の写真の奥のほうにわずかに見える、富士本町商店街のゆるキャラ「ロペティ」がいるイケダビルのほうなので、最初にそちらに回って入場パスをもらいましょう。コロナ対策のため、センサー機器による体温チェックをします。

こちらは旧三島屋酒店の入り口。正確には分からないですが、15年くらい前(たぶん)に閉店した店舗にそのまま残されていた店内什器やディスプレイ、小物などを使って、インスタレーション作家の荒木由香里さんが懐かしくも不思議な空間を店内に再構成しています。

ちなみにインスタレーションとは、ごく大雑把に言ってしまえば「オブジェなどでデコレーションして、空間そのものを作品にする」アートです。

元酒店の店舗内に入ると、もともとどういう用途で使っていたのかは分かりませんが小さな扉があって、そこが作品空間への入り口になっています。

まるでディズニーランドのアトラクションのような、あるいはドラえもんの「ガリバートンネル」のような、くぐるのがちょっとドキドキする非日常感があります。

一応「撮影OK」となっていますが、ネタバレになってしまっては悪いので、内部は実際に行ってご自分の目で確かめてください。

その先は、まるで異なる時の流れが入り混じったよう。懐かしくもあり、ついこないだの出来事のようでもあるような。時が止まっているようでもあり、普段どおりに今も営んでいるような。不思議な時間感覚です。

次に、イケダビルのほうへ。1階から3階、そして屋上までが展示スペースで、各階をそれぞれ別の作家さんが作品化しています。

いかにも時代がかった狭い階段を2階に上っていきます。アート展示場独特の静けさも相まって、商業施設のバックヤードにこっそり忍び込むようなドキドキ感。

建物そのものが、旧い大学の校舎とか建て替え前の町役場庁舎とか、とにかくそんな昭和の時代の匂いに溢れていて、いつか見た懐かしさを感じさせます。

こちらも、作品そのものは現地でぜひ見てください。

屋上まで上ると、

パンフレットのイメージビジュアルでも使われている鉄塔が現れます。この屋上の内外にも、特殊照明作家・市川平さんによる光のインスタレーション作品が施されています。

この屋上にある電球アートは夜に見たらきれいだろうな、と思っていたら、通常は16時までのところ、土曜日(11/7・11/14・11/21)のイケダビルのみ18時まで開催時間延長が決まったそうです。

ついでに、富士本町に住んでいる人・働いている以外はふだんなかなか見られない、上からのアーケード街風景も楽しんじゃいます。

こちらは2階からの景色。ふだん見慣れている街も、上から見るとちょっと趣が違います。


さて、この「富士の山ビエンナーレ」。

最初に書いたように全国区から人を呼び寄せることのできるような普遍的視点を備えたイベントなのですが、一方で地元民ならではの楽しみがあります。

それは、今回訪れた商店街の旧いビルや古民家など、歴史的価値のある地元の文化資源が現代アートとうまく融合されているところ。まあそのあたりFace to Faceの記事でも書いていることなんですが、訪れてみるとあらためてそれが実感できます。

ふだん歩いている商店街のシャッターの向こうに、あるいはふだん車で走っている道を一本外れたすぐそこに、こんな世界が広がっていたんだなあ、という驚き。非日常とは日常の反対側にあるのではなく、むしろ日常空間のほんのすぐ隣にあって、あとはそれに気づくかどうかだという、一種の藤子・F・不二雄的な世界観です。

もちろん、その日常と非日常をつなぐ扉となるのがアートです。

アート作品そのものを楽しむと同時に、アートをきっかけにして、自分が何気なく住んでいる場所のすぐそばにある「少しふしぎな世界」をのぞいてみる。そんな楽しみ方のできるイベントでした。

11月23日までの土日祝に富士市・富士宮市・静岡市清水区蒲原の4ヶ所でやっています。

富士の山ビエンナーレ2020

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